『ハイエースサスペンション セットアップ講座』

ホームページのデザイン変更に伴い足回り講座の記事が50%くらい削除されてしまいました。
マッタリと復旧させて頂きますので気長にお付き合い下さい。

 
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こちらのコーナーはチェックマンハイエースにて数え切れないテストとパーツの変更を繰り返し得たデーターや参考になるお話をブログ的に少しずつ綴っていきたいと思います。


※サスペンションに関しましては様々な考え方と正解が無数にありますので、チェックマンの考え方としてご覧下さい。



【最初の第一歩】
弊社デモカーも第一段階ではダウンブロック装着とトーションバー調整によるローダウンを行い、ダウン幅も50mm→75mm→90mm→100mmと段階的に変更してみました。

次にダンパー交換、トーションバーが効かない状態になってしまうのだったらフロントはコイルオーバータイプのダンパーキットで何とかなるんじゃないか!?と考えたのです。

試乗して直に感じた事は『硬すぎる!』でした。
直巻きタイプのスプリングがセットされていますが、バネレートが高過ぎるため 、スプリングのリセッティングを行う必要がありました。

雨天時においてはフロントブレーキのABSが頻繁に作動する現象が発生。
結局、ダンパーの減衰力やバネの自由長などが問題点となり、納得のいく乗り心地とセッティングが出せなく、次々とダンパーを交換していく事になって行きます。

 


 

【ダンパーの役目と特性】
ダンパーはショックアブソーバーとも呼ばれるサスペンションパーツになります。


ダンパーの役目を解りやすく言いますとスプリングの脇役的な役目となり、スプリングが伸びたり縮んだりする速度をコントロールしたりします。

ダンパーは大きく分けますと複筒式と単筒式に分かれ複筒式はオイルショック、単筒式はガスショックと呼ばれています。

以後の説明では単筒式と複筒式を分けて考えるため、単筒式をダンパー 複筒式をショックと呼びます。

 

  
 

まずはオイルショック(複筒式)とガスダンパー(単筒式)の代表的な特徴について解説します。
※現在、一部の製品に限ってはかなり改善されていますので、全ての製品に当てはまる内容ではありません。

オイルショックのメリット
■ オイル室とガス室が一緒になっていてフリーピストンが無い為、ストロークが確保しやすい
■ 封入ガス圧が低いため、乗り心地に優れる傾向にある
■ 倒立式に比べ、フリクションを抑えられる
■ ダンパーケースが若干へこんでも、ショックアブソーバの機能にさほど影響がない
■ 量産に優れ、製品コストを抑えることができる

 
ガスダンパーのメリット
■ 封入オイルの容量が多い為、熱容量に余裕があり、安定した減衰力を発生することができる
■ ピストンバルブのサイズを大きくすることができる為、受圧面積が大きくなり、微小ストロークにおいても減衰力を確実に発生することができる
■ 放熱性に優れている
■ オイルとガスが混ざらないため、キャビテーションがおきない
■  構造上、取付け角度に制限がない

 
オイルショックのデメリット
■ 構造上、ガスダンパーほどオイル容量をかせぐことが困難
■ 構造上、ガスダンパーのようにピストンバルブのサイズを大きくできない為、減衰力の立ち上がりが遅い
■ オイル室とガス室が分離していない構造なため、キャビテーションを起こす

 
ガスダンパーのデメリット
■ 構造的に高圧ガスを封入するため、コツコツとした乗り心地になる傾向がある
■ ダンパーケースがへこむと、内側のシリンダー構造に直接影響を受けてしまう
■ 精密加工された部品を人の手で組上げる製法なため、量産には不向きで製品コストがかかる


【代表的な単筒式ダンパー】
ビルシュタイン、コニー、オーリンズ、エクスクルーシブダンパー

 
(用語解説)
 キャビテーションとは、ショックのオイルとガスが混じり合い泡立ってしまい、気泡によって減衰力が発生しない事です。


 

【問題点】
コイルオーバーダンパーに始まりその他のショックを短期間で次々と装着しましたが
ここでリアショックが頻繁に故障する事に悩みました。
中には新品装着後、5分で故障した物もありました。
この地点でリアショックの故障本数は既に10本、全てのショックにおいてピストンロッドのシールからオイルが出てしまう事からシールに問題ありと考えておりましたが、よく調べて行く内にピストンロッドの曲がりが原因と判明しました。


【リアショックアングルアジャストキット】


 



ここまで来てようやくダンパーの取りつけ角度に着目する事になりました。
ホームページの欄にも記載しておりますが、問題点はダンパーに加わる『側圧』です。
ハイエースのダンパーは斜めにセットされている為、スムーズな動きになっておらず、常にピストンロッドには曲がろうとする力が加わりダンパーの故障原因になっています。

ダンパーの故障解決のために誕生したのがリアショックアングルアジャストキット!
ダンパー下部の取り付け位置をオフセットさせ極力ダンパーを真っ直ぐにスムーズに動かせる様に開発いたしました。


 



詳しくは後述しますが、サスペンションパーツは『ひとつの部分が強すぎるとダメ』なんです。
それぞれのサスペンションパーツが少しずつ力を発揮し、スムーズに動く様にする事が良い結果を生みます。


本来の目的はダンパーの破損防止として開発を行いましたが、結果としてアングルアジャストキットを装着する事でダンパーがスムーズに動作し乗り心地にも反映されます。


【ダウンリーフ】




ダンパー交換を繰り返す中、『ダンパーは後回し』リアのリーフスプリングの硬さを何とかする事が早道と考えました。
創業以来、レース車輌〜カスタムカーを専門にして来ましたが、他社スプリングでは乗り心地や車高に満足できず専門に扱う車輌のスプリングは全て特注オリジナルスプリングを開発、装着してきました。


オリジナルスプリングのメリットは発注ロット毎にバネレートや車高などの仕様変更が出来る事です。
変更と言っても漠然とした変更を行うのではなく、コンプリートカーの販売をしている事から納車までには登録業務がありますので、一度は必ず走行させる機会があります。
月に15〜20台程登録へ行く往復道中では様々な路面状況がありますので、ここで感じた事を次回の発注時にフィードバックさせる事を繰り返しました。
様々な車輌のスプリングを開発いたしましたが、中でも当時専門にしていたMARK?wagon/vanのスプリングはかなりの好評を頂き通算生産台数2000台オーバーを記録



余談が長くなりましたが・・・
ハイエースバンのリーフスプリングは1トン〜積みに対応できるバネレートに設定されております。
ロワードリーフ開発時に純正バネレートを計測に出したところレーシングカー並みのバネレートと言う事が解りました。これは以後貴重なデーターにもなっていきます。


オリジナルロワードリーフを開発するにあたり1Kずつ異なったバネレートの試着、試走を繰り返しました。
スプリング式と異なり入れ替えが容易では無い板バネ式には相当な労力を費やしました(汗)
その後、数ヶ月のテストを経てようやく納得出来るバネレートが決まりタイプ1を発売しました。
拘ったのは勿論『乗り心地』と『走行安定性』純正リーフでもある左右のバネレートの誤差を極力抑え、誤差による左右の揺れにも配慮いたしました。




【ダンパーの開発】
冒頭で申しましたとおり、市販されている殆どのショックアブソーバー(他車流用加工品も含め)を装着した今となれば次に選択するものが無く、各ダンパーメーカーさんに連絡を取りオリジナル減衰力での製作を依頼する事にしました。
結論から言いますと私が考えるショートサイズでの製作は不可能との回答でした。


【ノーマルサイズのショックで75mm以上ローダウンした場合】
ストロークが不足したり、底付きを起こしショックの意味が無くなってしまいます。
現在、数多く市販されているHIACE用のダンパーはノーマル車高を基準にしたセッティングをされているものが多く、ローダウンしたHIACEに装着した場合、予期せぬ乗り心地になる事もあります。




 仕方無い結果となりましたが、私の発想に関しては各ダンパーメーカーさんの開発担当の方も興味を持たれており、各メーカーさんがハイエース用ダンパーの開発をされた際の車高、タイヤサイズ、積載などのデーターを教えてもらいました。『だから条件が変わると・・なんですね』


それから数ヶ月・・・
あるダンパーメーカーさんを訪ねる事にしました。
こちらの会社は全て国内自社生産されていますので、特注にも対応しており、有名メーカー、ショップのOEM生産も手がけられております。
しかし、こちらの会社での一番の問題は価格面です。
ですので訪ねるのが一番最後になりました。
社長と専務さんにお話していく中で自分が計画しているハイエースダンパーの考え方と価格を言ったところ
回答は『それってウチのダンパーの1本半の価格やね』と笑われたりもしたもんです。



訪ねて行ってから数ヶ月
価格面の折り合いが一向につかず、前へ進みません。
ある日社長が『一回横に乗せて』と言い某高速をチェックマンハイエースでドライブする事になりました。
社長の感想は『これが今までの中で一番マシなショックなの?』でした。
加速、減速を繰り返す度にフロントが持ち上がったり沈んだり、更には高速道でのフワフワ感などを指摘されました。
私は心の中で『だからここへ開発の相談に来ているんです。市販品なのでこれが限界なんです』でした(笑
)


同乗走行から約1ヶ月
問題の価格面について少し検討して頂いた様です。
別タンクをダンパーと考えず、部品として考えた価格を算出して頂きました。
訪ねて行った当初からフロントには別タンクの設置を希望していましたが、製造側からするとダンパーが6本の計算となります。
また、製造コストはフォーミュラーカー、軽カー、ハイエースどれを作ってもほぼ一緒と言う製造側の立場も理解し、私は『価格より性能面を重視』する事に頭を切り替えオリジナルダンパーの開発がようやくスタートとなりました。



【2008/12/28セッティング開始】
数セットのテストダンパーを用意して頂きリレー方式でダンパーのセッティングを行っていく事となり、
業務終了後、雨天以外毎晩一般道路を走行しました。 

 


初回のお任せしたセッティングは全体的に減衰力が高くて乗りづらく胃が痛くなりそうでした(笑)

2回目のセッティングは少し緩やかな減衰力にセッティングして頂きましたので、街乗りではまずまずの乗り味です。
しかし、高速道路へ入ると減衰力が急激に立ち上がりレーシングモードに切り替わってしまいます(汗) ここでも胃が痛くなりそうでした。
『ピストンスピードが上がると減衰力も素早く立ち上がる』は単筒式ダンパーのメリットでもありますが、ちょっと立ち上がり過ぎでした。




【2009/6/1セッティング開始から6ヶ月経過】
このあたりから私も疲れと焦りを感じ始めました。
そして製造メーカー側も私と同じ心境になっている事も理解していました。
ある日こんな言葉を社長にかけられました。
『もう売っても駄目やね・・・』
その言葉の意味はショック開発において経費が完全にオーバーしていると言う事です。
『確かに・・・でも、ここまでやって来たからには出来なかったでは終われない』と心の中で呟いていました。


【減衰力とグラフ】
スプリングや板バネの開発は1キロずつバネレートの仕様が異なるものを順に装着していきますと、
ある程度のところでバネレートが決まります。





しかし、ダンパーの開発は始めての事ですし、スプリングの様には上手く行きません。
なぜならばダンパーの減衰力設定には限りが無いからです。



【ダンパーメンテナンスの必要性】
今回はヒストリー話とは異なり、ダンパーのオーバーホールの必要性について書いてみたいと思います。

エンジンオイル交換の必要性は何となくでも皆さん理解されていますよね

消耗品であるオイルは半年または3,000キロ走行までに交換されていると思います。
オイルは酸化しますので、オイル交換無しでは、オイルが劣化して油膜保持が出来なくなったり、
オイルに混じったスラッジや金属粒子がエンジンにダメージを与えます。

ダンパーオイルも同じです。
2年〜でオイルは劣化し、油膜の保持が困難になります。
また、オイル内に発生する不純物をそのままにしておくと、ケース内面摩耗の原因にもなります。

じゃーダンパーのオーバーホールって何だろう?
一般的には内部の状態確認、分解洗浄作業、ダンパーフルード、シール類の交換、ガスの充填がメインとなっています。

 



 

某社ダンパーを題材にしたカットモデルで簡単に解説します。
 


 

こちらが↓メインになるピストンバルブ 減衰力のミナモトです。
 




左側のピストンはフリーピストンと呼ばれ、ガス室とオイル室の間にセットされています。

単筒式ダンパーの場合、ピストンが2個セットされています。

 


 

ご覧頂きたいポイントはこちら




ピストンが位置していたケース内部が磨耗して光っているのがお解かり頂けますでしょうか



題材のダンパーは5万Km以上オーバーホールせずに使い続けましたので、ダンパーケースまでも磨耗しています。
磨耗部分をピストンが通過する際、本来の減衰力は発生しなくなります。
この様な状態になるまで放置するとダンパーケースの交換を余儀なくされます。

しかしながらダンパー内の状態を車輌オーナーが確認する事は出来ませんので、
各メーカーでは2年あるいは2万キロ毎のオーバーホールを推奨しているわけです。

オーバーホールが出来ない複筒式ショックの場合は2年で交換と言うことになります。

凄まじい運動回数を行い、とても過酷な状態におかれているダンパーです。
オーバーホールなんて難しく考えず、ダンパーのオイル交換、ガス圧調整、元の状態(ポテンシャル)に戻す為とお考え頂ければ良いと思います。

初回のオーバーホール時期は早ければ早いほど良いとされています。(5.000〜10.000Km)



ここで少しダンパーのガス圧についてふれてみます。

 


ダンパー内には窒素ガスが充填されています。

窒素ガスを充填する理由はダンパーフルードの発熱やキャビテーションの抑制が目的とされています。
しかし、窒素ガスと言えどタイヤの空気圧が徐々に減っていく事と同様にダンパーガス圧も経年低下していきます。

ガス圧が低下しますと当然ダンパーの減衰力も変化します。
例えばダンパーを縮めても戻ってこない場合はガス抜けしています。

ダンパーを縮めても戻って来ない状態まで劣化しますと
タイヤを路面に押し付けるチカラがなくなり、フラット感もなくなります。




【2009/7/25セッティング開始から8ヶ月経過】
苦労の結果がある程度出始めて来た様に思い始めました。
雑誌取材の走行インプレッションにおいても評価が上がり始めた事もあり、焦る気持ちを抑えながら毎晩走行し続けました。

 


【2009/7/29】
リアのダンパーセッティングはこのあたりからようやく決まり始めました。
ここで積載重量を増やし、通常と異なる条件にした場合、どう変化するのか?にチャレンジした。
積載重量は約500キロでラゲッジスペースとセカンドシートに積載


【ホーシングとバンプストップ】
この地点でのリア廻りの仕様はエクスクルーシブダンパー+ロワードリーフタイプ1(ミディアム)+37.5mmダウンブロック+バンプストップ
500キロの積載条件においての結果⇒積載重量によって車高が下がる事でバンプストップとホーシングのクリアランス(有効ストローク)が減少してしまい、凸凹のきつい路面ではバンプタッチによる衝撃でドーン!でした。
解っていたことですけど・・・(笑)
フロントに関してはストロークにまだ余裕がありますが、細かいお話をしますとピストンロッドが僅かながらでも沈み込む事でダンパー内のガス圧も変化します。
今回のテストにおいてはフロントの減衰ダイアルをソフト方向に設定する事で対応出来ました。



【リアエアサスペンションキットの開発】
500キロのウエイトを積んだテストを終えてから暫く考えていました。
私自身のハイエースの使い方では500キロの積載は考えられません。
せいぜい積んでも乗車定員+手荷物くらいです。

しかし!!一人乗りのテストにおいても普段から感じている事、それは
『僅かな条件変化においても』 乗り心地に影響を受けてしまうハイエースならではの弱点!?
燃料タンクの残量で明らかに乗り心地に変化が起きている事にお気づきでしょうか?



【ヘルパーエアサスのポイント】
積載、条件変化、乗り心地、簡単に、壊れても走行可能
この5つのわがままとも思えるポイントを考え開発したヘルパーエアサス!
実用性重視のスタンダードモデル!




積載、条件変化、乗り心地⇒エアバックにエアーを充填する事で無段階調整が可能
簡単に⇒お好みの配置にセットしたパドルスイッチを上下させるだけで、乗り心地と車高調整が可能





壊れても走行可能⇒万一トラブルが発生した場合の車高はエアバック装着前の車高以下になりません。

【もう少し詳しく】
ここではリーフを主バネと呼び、ヘルパーエアサスを補助バネと呼びます。
現在、主バネはロワードリーフ装着で50mmダウンしているとします。
この状態に補助バネのヘルパーエアサスをセットしても50mmダウン状態のままです。
決定的な車高は主バネで決まり、条件が変わった際、補助バネにエアーを充填する事で
元の車高、あるいは最大50mmアップが可能になります。



【エア圧ゼロ時】




【エアーMAX充填時】




従って、ショーモデルの様なエアサスキットとは異なり、故障しても着地状態になりませんので、走行が可能。
現在のところ検査においてヘルパーエアサスは補助バネとしての扱いとなります。
追加するバネに関しては適切に取り付けられた状態であれば構造変更は不要。



【2010/2/1タイプ2リーフ開発開始】 
ヘルパーエアサスを装着後はリアの安定感が更に増しました。
しかし、神経質になってココまでやってきた私には少し気になることが・・・
エアバックエア圧ゼロの状態であってもスプリングが追加された訳ですから、若干バネレートが上がった乗り心地になります。感覚的には1キロアップくらいかな?

それからもロワードリーフタイプ1初期モデルで毎晩テスト走行を繰り返し
私が出した結論は『もう1種類のバネレートが必要』と思いました。
理由は積載を殆どされない方には少し硬く感じられるかも知れないと判断したからです。
一度は装着したエアバックを取り外し、急遽、異なるバネレートのリーフを装着し走る事1ヶ月

ここで誕生したのがロワードリーフタイプ2 (ソフト)です。






製造段階において生じる左右のバネレートの誤差に関しても注文をつけました。
純正リーフを計測に出した時に解った事ですが、いくら純正品と言えど左右の誤差が結構あったからです。
製造工場のお話ではJIS工業規格において1キロ前後の製造誤差は許容範囲とされているそうですが、 誤差0.2キロ以内の製造を実現して頂いております。
タイプ2リーフは常時積載をされないファミリーユース用のバネレートに設定しました。


 

足回り講座No2に続きます。

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